Luminescence シリーズ - アーティスト・ステートメント

"暗闇の中では眼は動かない。そこに「何か」があることを実感しなければ眼は動けない"

この言葉に惹かれて制作を始めました。
まず"暗闇"を創ること。
そして"視る"ということとはいったい何なのか?
人間の眼と写真の眼の違いを考えました。

シャンデリアを被写体に選んだのは、その素材がもっとも光に素直に反応すると考えたからです。
光りを受け、そして放出する。
そこには「光とはいったい何であるのか?」という問いかけが出来ると思います。
前作[タブローシリーズ]でも光をコンセプトの中心に据えました。
それは光が永遠なるものであるからです。

人間が誕生する以前から存在するもの。
それはきっと懐かしさにも似たものです。
我々人間よりも遙か太古より存在した光。

そして「視る」という行為。
写真には必ずピントと呼ばれる部分があります。
単眼であるカメラのレンズ、二眼である人間の眼。
この両者の微妙な差異を知ることは「視る」という行為がどのようなものであるかを理解する道標なのです。

人の眼は必ずピントが合う状態で視ている。
そしてピントが合っている所にしか意識は向かない。
そこにピントを合わせるというのは、つまり「何かを探す。何であるかを知ろうとする」行為なのです。

整理統合されて「これは…だ」と。

でもピントが合っていない"捨てられた部分"はどのようになっているかはあまり意識しない。
写真は静止画像の創造物です。
あらためて"視る"という行為を写真を通したときに再発見の驚きが生まれる。
極限まで人の眼に近づけて、なおかつ写真の眼と人の眼の差異が生まれるようにする。

余談だが…
これらシャンデリアはすべて歴史の重要な証人でもあります。
光り放つシャンデリアの輝きの下で歴史の舞台が生まれてきました。
ときには国家の歴史を変え、ときには悲しみや歓びの光を与えてきた。
しかしその舞台を語ることよりも重要なのは"すべては光のもと"でおこなわれてきたという事実だけなのです。

LUMINESCENCE {物理} 物質が外部からのエネルギーを吸収して発熱を伴わずに発光する現象。

小野 祐次

Photos gelatin silver print

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110cm×95cm (エディション 1/3)

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