被写体は16世紀から18世紀の絵画です。
撮影はすべて自然光でおこないました。
つまり"すでにそこに在る光"です。
16世紀から18世紀にかけて、まだ人間には「我々が作り出す光り-人工の光り」を手に入れることが出来ませんでした。
画家は輝く太陽からその恩恵を授かるか、わずかな蝋燭の微光のなかで制作を進めていました。
TABLEAUX タブロー(絵画)シリーズを制作するのに重要なコンセプトは、
"被写体となる絵画が制作された時代と同じ条件に戻る"
ということでした。
だからこの写真に現れたイメージと同じものを
貴方もこの絵の前に立てば観ることが出来るのです。
いやすでに貴方はこの写真と同じイメージを過去に観ているはず。
しかし記憶(記録)というのは曖昧なものです。
すでに観ているはずのイメージが自分の想い描いているものと違うのならば…?
きっと貴方はその瞬間を抹消することでしょう。
だからこの作品を観ると動揺する。
何故ならば自分が知っているはずのイメージとは違う"なにか"がそこには存在するから。
そしてみずから(人間)の記憶がいかに曖昧であるかを理解するでしょう。
オリジナルの絵画とはかけ離れたイメージがそこにはある。
貴方が知っている「どこか画集で、あるいはインターネットで、大量なイメージの中で知っているはず」ものとは違う"なにか"がここに写っている。
それは光りが描き出した"もうひとつの絵画"と言えるでしょう。
そして本来の主役であるオリジナルイメージが存在せず、
脇役(額装)が舞台の中央に立っている。
素晴らしい絵画も、彫刻も、そして写真も…
すべてが光りの恩恵のもと出現してきます。
それは光無くして何も存在することは出来ないのだ、と。
そして光とは「すでにそこに在るすべて」なのです。
決して忘れてはいけないすべて。
小野 祐次
Caravaggio
Bacchino malato
Ermite Lisant
D'Après Rembrandt
Dolcicarlo
Ritratto della Grand sa Vittoria della Rovere
Ascrived Velazquez
Pope Innocent X
Rembrandt
Portrait de l'Artiste au Chevalet
Hans Holbein
Ritratto di Enrico VIII(Henry VIII)
Michelangelo Merisi da Caravaggio,detto Caravaggio
Maddalena penitente
Goya
San Hermenegildo en la prision
作品 gelatin silver print
サイズ
110cm×95cm (エディション1/12)
80cm×60cm (エディション1/12)